今回は、婦人科と皮膚科の両面から、多くの更年期女性の悩みに向き合ってこられた専門医に、薄毛との向き合い方と具体的な治療法についてお話を伺いました。「更年期の薄毛は、エストロゲンの減少が大きな引き金になりますが、その背景には甲状腺機能の低下や、鉄欠乏性貧血といった他の疾患が隠れていることもあります。自己判断で悩む前に、まずは専門医に相談し、原因を正確に突き止めることが何よりも大切です」と先生は語ります。クリニックでは、まず詳細な問診と視診、そして血液検査を行うのが一般的です。血液検査では、女性ホルモンの値だけでなく、甲状腺ホルモンや血中の鉄、亜鉛の値などを調べることで、薄毛の根本原因を探っていきます。その上で、一人ひとりの状態に合わせた治療が提案されます。治療の選択肢としては、まず日本皮膚科学会のガイドラインでも女性の脱毛症治療薬として唯一推奨されている「ミノキシジル」の外用薬があります。これは頭皮の血行を促進し、毛母細胞を活性化させることで発毛を促す効果が認められています。また、ホルモンバランスの乱れが顕著で、ほてりやイライラなど他の更年期症状も強い場合には、「ホルモン補充療法(HRT)」が選択肢となることもあります。HRTは、不足したエストロゲンを少量補うことで、薄毛だけでなく、様々な更年期症状を根本から改善する効果が期待できます。ただし、血栓症などのリスクも考慮し、適応を慎重に判断する必要があります。さらに、血液検査で鉄分や亜鉛の不足が認められた場合には、医療用のサプリメントが処方されることもあります。先生は、「治療の効果を実感するには、ヘアサイクルに合わせて最低でも半年は必要です。焦らず、じっくりと取り組むことが大切です。そして何より、専門家に相談することで、『一人ではない』という安心感を得て、精神的な負担を軽減することが、治療の第一歩になります」と締めくくりました。
専門医が語る更年期薄毛の向き合い方と治療法