産後の抜け毛は、ほとんどの場合、時間が経てば自然に回復する、一時的な生理現象です。しかし、ごく稀に、その背後に、別の病気が隠れていたり、症状が、なかなか改善しなかったりするケースもあります。過度な心配は不要ですが、「これは、少しおかしいかもしれない」と感じた時に、病院を受診すべきかどうかの、判断基準を知っておくことは、ママの安心に繋がります。まず、受診を検討すべき、最も分かりやすいサインが、「1年以上経っても、抜け毛が減らない、あるいは、薄毛が改善しない」場合です。産後1年半から2年が経過しても、明らかに髪のボリュームが戻らず、分け目の地肌が目立つ状態が続くようであれば、ホルモンバランスの乱れだけでなく、他の要因が関わっている可能性があります。次に、「抜け毛の範囲や、抜け方」に、異常が見られる場合です。産後の抜け毛は、頭部全体から、均等に抜けていく「びまん性」の脱毛が特徴です。しかし、もし、頭頂部だけが、集中的に薄くなったり、あるいは、コイン大の円形に、髪がごそっと抜け落ちたり（円形脱毛症）した場合は、産後脱毛症とは異なる、別の脱毛症が疑われます。また、「頭皮に、強いかゆみや、赤み、湿疹、大量のフケ」といった、皮膚症状を伴う場合も、注意が必要です。これは、皮脂のバランスが崩れて起こる「脂漏（しろう）性皮膚炎」など、頭皮そのものにトラブルが起きているサインです。これらの症状が見られた場合は、まずは「皮膚科」や、「女性の薄毛専門クリニック」を受診することをお勧めします。医師は、頭皮の状態を診察し、必要であれば、血液検査などで、全身の状態をチェックします。特に、血液検査では、薄毛の原因となり得る、「甲状腺機能の異常」や、「鉄欠乏性貧血」の有無などを調べることができます。もし、これらの病気が見つかった場合は、その治療を行うことで、抜け毛の症状も改善していきます。一人で悩まず、不安な時は、専門家の力を借りる勇気を持つこと。それもまた、ママにとって、大切なことです。