私が、自分の頭頂部に、明らかな異変を感じ始めたのは、30代に入ったばかりの頃でした。ある日、美容室で、合わせ鏡で後頭部を見せてもらった瞬間、私は、自分の目を疑いました。つむじを中心に、地肌が、500円玉ほどの大きさで、くっきりと透けて見えていたのです。「最近、お仕事お忙しいですか?少し、お疲れのようですね」。美容師さんの、気遣いに満ちたその言葉が、私の胸に、ぐさりと突き刺さりました。その日から、私の、つむじはげとの、孤独な戦いが始まりました。まず、私が試したのは、市販の育毛剤でした。毎晩、風呂上がりに、頭頂部に液体を振りかけ、必死で頭皮をマッサージしました。しかし、数ヶ月経っても、目に見える変化はありません。それどころか、鏡で見るたびに、地肌の見える範囲は、少しずつ、広がっているようにさえ感じられました。次に、私は、食生活の改善に取り組みました。ジャンクフードを断ち、髪に良いとされる、大豆製品や、亜鉛を多く含むレバーなどを、意識的に食べるようにしました。生活習慣も見直し、早寝早起きを心掛け、週末にはジョギングを始めました。確かに、体の調子は良くなりました。しかし、つむじの状態は、依然として、好転の兆しを見せませんでした。そして、月日は流れ、35歳になった頃。私は、もはや、ごまかしきれないほどに広がった、つむじの薄毛に、絶望していました。外出する時は、常に帽子が手放せず、電車で座ることも、エレベーターで人の後ろに立つことも、苦痛でしかありませんでした。そんな時、インターネットで、AGA専門クリニックの存在を知りました。「AGAは、病気であり、治療できる」。その言葉に、私は、最後の望みを託すことにしたのです。クリニックでの診断は、やはりAGAでした。しかし、医師は、「大丈夫。今からでも、決して遅くはありませんよ」と、力強く言ってくれました。その日から、私は、フィナステリドとミノキシジルによる、本格的な治療を開始しました。そして、1年後。私のつむじは、完全とは言えないまでも、明らかに、地肌の透け感が減り、髪の密度を取り戻していたのです。